博士課程に進学するか悩んでいる人へ
所属していた研究室には毎年入学希望者が何人もくるのですが、そのほとんどが修士までは良しとしても、博士課程に進学するかどうかを悩んでいます。
私自身は、全体的に考えて博士課程に進学したこと自体は後悔しているわけではありませんが、こうした悩みを抱えている進学希望者も多いと思い、記事にしてみようと思います。
後悔したこと6つ
研究生活で後悔したこと
1. 土日がほとんどない
2. 放置プレイがつらい
3. 経済的につらい
就職関連で後悔したこと
4. 就職活動の時間が修士以上にとれない
5. 就職口が多くはない
6. アカデミアのポストがない
研究生活で後悔したこと
1. 土日がほとんどない
・評価はすべて結果で決まる
研究者というのは、どれだけ働いたかという視点での評価は全くありません。評価されるのは結果のみです。学会発表や論文掲載といった結果のみが評価につながり、アカデミックポストや科研費の獲得に寄与します。
そういった状況になるとどうなるか・・・
「明日できることは今日やろう」
月曜日のための準備を日曜日に、日曜日のための準備を土曜日にということになってきます。
・生物を取り扱うため、土日の概念がない
また、バイオ系の研究をしていると、細胞培養であったり、マウスをよく使います。それらは、土日も関係なく生きている物なので、それらの管理が必要になります。そうなると、土日も関係なく研究室に行き、実験をしなければいけません。
友達と飲み会があるときも、実験の都合で遅れて合流するときが多かったですね。
2. 放置プレイがつらい
・企業と違って仕事のマネジメントはない
これは所属する研究室にもよるのかもしれませんが、多くの研究室において、研究室の教授は、学生をマネジメントして研究を推進するという考えを持っていません。こうしたことから、学生自身が自身をマネジメントして研究計画を立てて、実験をしていかなければなりません。
・自分の仕事は自分で決める
研究テーマも博士課程になると自身で考えたテーマを行うことが多く、研究室の中でもそのテーマの専門家という扱いになってきます。そのため、研究室内で頼れる人がいない、ということもよくあります。
私の場合も、論文投稿の段階になるまでは、基本放置され、自分ですべて考えて実験を行っていました。論文を投稿する段階になって初めていろいろと指導された経験がありますね。
3. 経済的につらい
・無収入の期間が続く
これも大きなポイントです。博士課程の学生は、無収入ですから、両親の援助が欠かせません。一部の学生は学術振興会特別研究員となり、収入を得ることができますが、採択率は25-30%ですので、狭き門となります。
博士課程に進学した人の奨学金の返済額が600万円以上になることはよくあることです。
博士課程の学生の経済事情については以前記事にしましたので、ぜひご覧ください。
博士課程の学生の収入源について
就職関連で後悔したこと
4.就職活動の時間が修士以上にとれない
・修士の就活は認知されているが・・・
修士までは就職活動の時間を多く割くというのが一般的になっていますので、教授の理解も得やすいです。周りの修士の友達たちも数か月研究室を休んで就職活動をしていました。中には、就職が決まらないと嘘をついて、休み期間を延ばしている人もいたくらいです。
しかし、博士に進学している学生になると、教授の就活に対する理解も薄く、なかなか就活の時間が取れません。毎日研究室に通いながら、空き時間に面接を受けに行くという、転職活動にも似た活動を強いられます。
研究計画とともに就職活動計画も自分ですべてマネジメントしなければいけません。
5.就職口が多くはない
・博士号取得者を採用する企業は少ない
日本ではまだまだ博士号取得者の社会的地位が高くありません。企業側も博士の学生をどのように採用すべきかわかっていないケースが多いです。
そうなると、就職先はぐっと狭くなります。
多くの博士課程の学生が企業の研究職を求めるため、倍率が高くなり、競争率が高くなる傾向にあります。この部分については、後日詳しい記事にしたいと思います。
・日本では博士号取得後に自分の専門外へ飛び出す勇気も重要
これまでとは違う分野へ、一からという気持ちで飛び込んでいく気持ちを持つことも重要だと思います。
博士号を取得する人の多くが、論理的思考力、事務処理能力、プレゼンテーション能力、セルフマネジメント能力といった能力が鍛えられます。これらの能力は、民間企業のどの職種においても極めて重要になってくる能力です。
現に、海外では博士号取得者に対する待遇が、修士号以下の人と比べて格段によいです。
給与面で言うと、アメリカでは平均給与と比較して、民間企業において1.8倍の給与となっていることがわかっています。
・キャリアで考えると博士号取得した場合、有利になる可能性もある
博士号取得者への待遇という面では、日本ではまだまだ不遇ということになりますが、就職後のキャリアを考えた場合、博士号取得者は有利になると思っています。
私は博士号取得後民間企業に勤めたことがありますが、博士課程で得た経験というのは、仕事の場面でも生かせる部分が多く、同期の人よりも多くの成果を出すことができました。
6. アカデミアのポストがない
・公募で採用されることは非常に難しい
アカデミアのポストについては、公募する決まりがあります。しかし、そのほとんどが出来レースになっていて、最初から採用される人が決まっていたりします。
公募に応募しても、20、30回は書類すら通らないというのはよく聞くことです。
完全に公募で募集しているケースもありますが、その場合は「誰もやってくれる人がいない」=「やばいポジション」ということになり、お勧めできません。雑務が非常に多いポジションで、研究をする時間もままならないということが推察されます。
そういった理由からアカデミアのポストは、完全にコネ重視で考えた方がよいと思います。学生時代に学会などで人脈を作って、自分のポストを得られるチャンスを作っておくという作業が重要になります。
最後に
今回は公開したことについて書きましたが、もちろん博士課程に進んでよかったこともたくさんあります。それについてはまた記事にしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
コメント
[…] 前回は博士課程に進学して後悔したことについて記事にしました。 […]